1999/ 3/26


タイルモード(ペーパー空間2)

ここ1、2年の間にAuto CADやLTに関する参考書が増えてきたように思います。
全くの初心者を対象にしたと思われる書籍に、ペーパー空間を使った縮尺の設定は、Auto CADの縮尺の概念を理解した上級者向きのテクニックであると書かれていましたが、私はそうは思いません。線の引き方も分からない状態であった私が、始めて覚えたのがペーパー空間で、それを知ったからこそAuto CADを覚えてみようかなと思ったくらいです。
図面を描くには初めに縮尺を決めるのが普通で、CADにおける縮尺の考え方が分からなくては、何も始まりません。ペーパー空間を使った縮尺の設定方法は、初心者の私にとっては、とても分かり易いものでした。

私がどのようにペーパー空間を理解したかということについて書いたものが、ペーパー空間のページです。自己流の解釈ですので、正確にペーパー空間を説明しているとは言えないところもあります。
あの説明を読んで、分かり易かったと言ってくれる人もいますが、ペーパー空間とモデル空間の関係をあのようにとらえてAuto CADを使ってみると、色々と矛盾が生じることもあると思います。

モデル空間からペーパー空間に切り替えるコマンドを思い出して下さい。タイルモードのオンオフでしたね。
ボタンで操作する時は、「ペーパー」ボタンではなくて、「タイル」ボタンでした。
タイルモードって何でしょう?

ところで、Auto CAD に画面分割の機能があることを御存知でしょうか。私は長いこと知りませんでした。
分割した画面それぞれには、同じ図面ファイルの内容が表示されます。離れた場所にある図形をコピーするときなどに、コピー元とコピー先を表示させておくと便利です。
分割された画面1つ1つは、ビューポートと呼ばれる窓です。分割数や窓の大きさは、予め用意されているレイアウトから選ぶことになります。この窓は隙間なく画面いっぱいに(タイル状に)並べられます。
これがタイルモードです。
新規に図面を開いた時は画面分割されていませんが、これも実はビューポートが一つだけのタイルモードです。これをモデル空間と呼んでいます。

タイルモードをオフにすると、ビューポートの配置や大きさは自由に変えることができるようになります。ぴったりとくっついていたビューポートではなく、ビューポートとビューポートの間に隙間ができます。
その隙間にも図を描くことができるので、ビューポートの中と外と違う空間が存在するかのようになります。ビューポートの外の空間がペーパー空間で、実際にはビューポート同士の隙間だけでなく、ビューポートの上にも図が描けます。
自由に配置が決められるビューポートということで、ペーパー空間に開かれたモデル空間を「浮動モデル空間」と言い、タイルモードで表示しているモデル空間を「タイルモデル空間」と言っています。

ペーパー空間を使った作図方法は、ビューポートの表示方法の違いだとも言えます。作図方法が違うわけではないのです。
ペーパー空間を何か特殊な作図法であるかのように考えている方もいるように感じますが、モデル空間だけで作業する時と何も変わりありません。寸法スタイルや文字高さなど、そのままです。かえってモデル空間だけで作業しようとすると、ひねった考え方をしなくてはならなくて、私には難しく感じられます。

(C) Yoshiyuki Inaba 1999

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