1999/10/ 1


図面の単位

最近私の身近で、次のようなトラブルがありました。
何かの操作をした直後、ファータルエラーがでました。幸い図面の保存もでき、LTも終了できたそうです。
次にその図面を開こうとした時、図面の監査と修復が必要であると、メッセージがあったので、そのようにしたそうです。
その後ハッチングをすると、それまでのハッチング尺度では、模様が細か過ぎるということになったそうです。
既にそれまでに描いたハッチングは、もとのまま表示されているが、新たに描くハッチングは、それまでの尺度を25倍すると大体同じになるとのことでした。

それを聞いてピンと来ました。
もともとメートル系だった図面が、インチ系に変わっているのです。
そもそも、Auto CADは単位を持たないCADであるはずです。
それが、メートル系、インチ系というのは、どういうことなのでしょうか?

例えば1辺が200インチの正方形を描いてみましょう。
Auto CADは単位を持たないですから、200作図単位で描きます。
寸法を表示すると、当然200と表示されます。
同じ大きさの正方形をメートル系で描くとどうなるでしょう?
1 inch = 25.4 mm ですから、1辺が200インチの正方形は1辺が 5080 mm の正方形です。
メートル系で描くときには、1辺の長さを5080作図単位にします。
2つを並べてみると、ミリメートルで描いた正方形はインチ系の25.4倍になっています。(並べてしまいましたが、実物は同じ大きさですよ)
これを1/100の縮尺で印刷すると、実物は同じ大きさですから、印刷結果も同じ大きさになります。ただ、片方の寸法は200になっているのに対し、もう一つは5080になっています。

さて、この正方形をハッチングしましょう。ついでに輪郭は一点鎖線にします。
インチで描いた正方形に使った模様は、当然ミリメートルで描いた正方形には細かすぎます。模様の粗さを25.4倍してやれば、印刷した時に丁度同じイメージになるはずです。つまり、ハッチングの尺度、線種の尺度を25.4倍するのです。

尺度を変えない方法もあります。
初めから粗い模様を用意しておけば良いのです。
実はAuto CADには、線種パターンとハッチングパターンを定義したファイルが、インチ用、メートル用に2つ用意されています。

線種ファイル
ハッチングパターンファイル
イ ン チ 用
メートル用
イ ン チ 用
メートル用
Auto CAD
acad.lin
acadiso.lin
acad.pat
acadiso.pat
Auto CAD LT
aclt.lin
acltiso.lin
aclt.pat
acltiso.pat

Auto CAD と Auto CAD LT とでファイル名が異なりますが、中身は同じものです。
isoが付くファイルは、線種名、ハッチング名は全く一緒で、パターンを定義する数値が単純に25.4倍されています。

線種をロードしようとすると、その図面がインチ系ならば、デフォルトで aclt.lin が開きます。ただ、線種ファイルはユーザーが作ったファイルも読めるように、ファイルを開くダイアログでファイル名を変更可能ですから、図面の単位系と線種ファイルが一致していない人もいる可能性があります。(ハイ、私がそうです。)
ハッチングパターンファイルは、インチ系ならaclt.pat、メートル系ならacltiso.patが開きます。これは変更できません。

線種パターンは一度ロードすると、図面内に保存されますが、ハッチングパターンは、ハッチングを作成するたびにファイルが開かれます。
冒頭のトラブルでは、メートル系だった図面がインチ系になってしまったために、インチ用のパターンファイルが開かれるようになってしまったのが原因です。

さて、その図面がインチかメートルかはどのように決まるのでしょうか?
それは次の2つの変数によります。
MEASUREINIT はレジストリという所に保管されるグローバルな変数です。
MEASUREMENT は図面内に保管されます。こちらの変数の方が優先されます。
それぞれの変数名をコマンドラインでタイプすると、現在の設定が分かります。
この変数の値が
0 なら、インチ/フィート
1 なら、メートル
です。
新規に図面を描く時に、「ゼロからスタート」を選ぶと、メートルにするかインチにするかを選択するようになっています。この時に、変数の値がセットされます。
冒頭のトラブルでは、MEASUREMENT が0になっていました。

これまで見てきたように、インチかメートルかというのは、それぞれの単位を相互に変換する必要があるときに、尺度の問題があるのであって、メートル系でしか描かないのなら、1つでいいはずです。
iso が付くファイルが登場したのは、Windows95対応版がでてからではないかと思います。それ以前のバージョンは、今で言うインチ系だけだったと思います。
また、Win版が出てからも、旧バージョンを使っていた所も多いはずですから、私はインチ系1つで通してしまった方がいいと思っています。
最近の参考書では、メートル系で描く時はファイル名にiso が付いたファイルを使うのだと、何の説明もなしに書かれているものが多いようです。デフォルトでそうなっているのだから、おそらくほとんどの人はそちらを使っていることでしょう。
このサイトで御提供している線種ファイルは、そういう意味でインチ系ということになります。利用される方は御注意下さい。
また、他のCADなどでDXF形式でファイルを書き出すときに、インチ系になっているものもあるということです。おかしいなと思ったら、上記の変数を確認して下さい。


(C) Yoshiyuki Inaba 1999

目 次 | Home | E-mail